がー助君の日記


by miita06
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カステラ

僕は高校時代は親元を離れて寮生活をしていた。寮は絶対的な階級制度で1年生は奴隷、相部屋の先輩の使いっ走りをさせられる。先輩のパンツとかを洗濯したり掃除の時間は1年が全部やる。ついで説教タイムが月1くらいにあって、正座させられてどつかれたりする。

僕はその頃悩める青少年だったので、よくわからないが、そういった不条理なシステムも人生修養の一環だと思って、あえて自ら進んで受け入れるようにしていた。そういう事をしてれば何か生きてく上で大事な事を悟ったり、人間的に成長するんじゃないだろうかとか、そういう事を考えていたんだと思う。他の1年生はなるべく3年生との接触を避けて、使いっ走りさせられないようにしたり、あるいは分担して当番制にして先輩のパンツなんかを交代で洗濯したりしていた。

相部屋になった同級生のY君はスポーツ推薦で入学して陸上部に所属していた。帰宅部の僕とは違って青春の殆どを部活に費やしている超体育会系少年だった。こういうタイプの人ってのは悪く言えば筋肉バカで単細胞だが良く言えば変な偏見に振り回されたりしない純粋な価値観を持った真っ直ぐな人間だったりする。暫くしてY君は先輩の洗濯から使いっ走り、掃除の時は皆が嫌がる雑巾拭きを全て進んでやる僕の姿勢に気づいたが、彼は前述したような人格者なので「格好つけやがって」とか「これはいいや、こいつが全部やってくれるから楽だぜ」などといったよこしまな事は思わず、「次郎、お前すごいな。いつも皆が嫌がる事を進んでやってるよな。俺は部活で忙しくて、寮に帰るとクタクタだから次郎が掃除や先輩のパシリをやってくれるからとても助かるよ。」と言って感謝しれくれた。それからある日、「これ感謝の気持ちだ。よかったら食べてくれ。」と言って大きな箱をくれた。中には上等なカステラが入っていた。

僕の行動は利他的な理由ではなく自分自身の為にやっているだけだが、他人に感謝されたり評価されるのは決して悪い気持ちにはならない。修行が良い因果が導き出したような気がしてちょっと嬉しかったりするので、そのカステラを喜んで受け取った。

一人でこんなでかいカステラを賞味期限までに完食する自信もなく、せっかくもらった感謝の気持ちを食い残して廃棄処分にするのもなんだかな~と思い、Y君と彼の陸上部の友人数人とお茶を買ってきて皆で食べる事にした。食欲旺盛な少年達の事だからカステラはあっという間になくなってしまったが、楽しいひと時を皆で過ごすことが出来た。

それから数日してY君が重々しい顔つきで僕のところへ来て「次郎、俺はすごくがっかりしているんだ。あのカステラはいつも世話になってる次郎の為に買ってきたんだ。それなのに他の連中に食べさせるなんてひどいじゃないか。俺の気持ちが台無しだよ。」と言った。

僕は「いやカステラは僕が貰ったんだから、誰かに分け与えてもそれは僕の勝手だし、一人であれだけの量を食えるわけがないだろ。そもそも他の連中と一緒に君もカステラ食べてたじゃないか。」という反論なんかをしてもよかったんだけど、僕は修行中の身で、不条理な事を甘んじて受ける事にしていたので、ただ一言「ごめん。」と謝った。

するとY君は「そんなわけで弁償してくれ。カステラ代4000円なんだけど。」と代金を請求してきたのだが、如何せん僕は修行中の身なので、これまた文句を言わずに一月分の小遣いである4000円を彼に渡してカステラを弁償した。

他人の嫌がる事を進んでやったら誰かに感謝され、その結果4000円を損失したわけだが、これは一体どう言う事だろう。なんの因果かさっぱりわからん。暫くして根気のない僕はこの修行を辞めてしまったが、もうちょっと続けてたら何かわかったのかもしれん。

ブログに書く事なくて困ってる時に使えるネタくらいには人生の役に立ってるのは確かだが。


by miita06 | 2017-02-27 13:16